いまだに影響の大きいコロナ禍ですが、制限・自粛一辺倒の対応から「コロナ禍でもできるだけ通常通り経済活動を行おう」という、いわゆるwithコロナへとシフトが進んでいます。
労働人口の減少・高齢化、度重なる法改正、そしてコロナ禍と様々な要素からの影響を受けて、派遣業界は今後どのように成長していくのか?

今回は、弊社代表取締役・田形がマイナビワークス代表取締役社長河原 輝篤様に、今後の派遣業界の展望やマイナビワークス社で行っているお取り組みなどのお話を伺いました。その内容を掲載します。

※以降、敬称略

「働き方と生き方の両立」をする為に、幅広い提案ができるのが「派遣」という働き方

田形:

御社については、業界内での注目度が高い「月刊人材ビジネス」の第36回(2021年11月号)派遣スタッフ満足度調査の「口コミ率」で1位になられ、続く第37回(2022年5月号)のランキングにおいては「口コミ率」の連続1位とともに「再就業率」1位とのダブル栄冠に輝いていらしたのが強く印象に残っています。昨年12月に河原様が新社長に就任され、直近の優良派遣事業者認定制度で優良派遣事業者の認定も受けられた御社に直接お話を伺えるのを楽しみにしておりました。本日はよろしくお願いします。

私はこれから派遣業界が迎える新しい時代を、業界のバージョンが変わるという意味で「派遣2.0」と呼んでいます。「派遣2.0」では、「派遣先と派遣スタッフのどちらをより重視するのか?」という「派遣事業のバランス」を考える時、派遣スタッフをいっそう重視し、スタッフファーストの経営が当たり前になるのではないかと思っています。これについて河原社長はどのようにお考えでしょうか。

河原 輝篤(かわはら てるあつ)
マイナビワークス株式会社 代表取締役社長

河原:

時代の変化に関しては仰るとおりで、今は、派遣スタッフや新たに登録される求職者に重きを置かないと、いくら派遣先からのニーズがあっても、なかなか人材を供給できないのが現状です。少子高齢化が進み生産年齢人口も減っていく中で、求人倍率も上がり、求職者が仕事を選びやすくなった売り手市場であることは間違いありません。またDX化により効率化が進み、仕事内容が変わっても、人の仕事や労働力の必要性はなくならないと思っています。加えて、働き方も多様化する時代でいかに「派遣」という働き方を選んでもらうかを考えなくてはなりません。

以前は難しかった「働き方と生き方の両立」が、今の時代ではできるようになってきているため、個人のライフステージや価値観に働き方や生き方をどうマッチさせるかという点で、幅広い提案ができるのが「派遣」という働き方だと考えています。そのようにして求職者にとって働きやすい世界を派遣会社が作っていかなければ、求職者から「派遣」という働き方は選ばれませんし、派遣先へも人材を供給できなくなると感じています。

田形:

ライフステージや価値観の変化に合わせて働き方と生き方をマッチさせていく、人生を犠牲にして働くのではなく、生き方を犠牲にしない働き方を実現する。当社のLifeShipという社名にこめた思いにも通じるものがあり、強く共感します。ワークもライフもふまえたキャリア支援こそ、これからの派遣業界に求められると感じます。

河原:

正社員登用の方が条件もよく、求人倍率も高い中で、求職者がなぜ「派遣」という働き方を選ぶのか?
働き方と生き方、その人の価値観、ライフステージ、趣味でもいい、それらを重視したい方にとってみれば、今まで培ったスキルや経験を活かしつつ、就業曜日や時間や働く期間を選べるという点で、「派遣」という働き方がマッチしていると私は昔からずっと思っています。

無期雇用派遣サービス「マイナビキャリレーション」は内部、外部の「人」の介在を通して、求職者の人となりを理解することを重視している点で差別化されています

 田形:

お話いただいた認識のもと御社の具体的な取組みやサービスについてお聞かせ下さい。

 河原:

当社がマイナビの1事業部から分社独立したと同時に開始した「マイナビキャリレーション」という無期雇用派遣サービスがあります。「マイナビキャリレーション」は、未経験から事務職へキャリアチェンジしたい方や、事務職でもっとキャリアを積みスキルアップを図りたいという方達のために、社会人経験や事務経験の浅い若年層の求職者を当社で無期雇用者として雇い入れ、派遣先にて就業いただく育成型のサービスとなります。「マイナビキャリレーション」というサービス名称は、「キャリア」と「リレーション」を合わせた造語で、派遣スタッフが私たちや派遣先と派遣サービスを通じて長期的なつながり(リレーション)を持つ中で、様々な経験を積んで成長し、将来につながるキャリアを形成して欲しい。また派遣スタッフの「キャリアをつなげる」という意味を込めています。

選考では、面接を2回実施し、内定の可否を行っています。また、内定後は外部講師を招いたビジネスコミュニケーションやマナー研修、PC研修を実施し就業開始にあたり未経験でも安心いただける体制を整えています。また、就業開始後も、営業とキャリアアドバイザーがそれぞれ担当につき、サポートを丁寧に行う体制となっています。育成型サービスのため、派遣スタッフには事務経験を積んでもらうと共に、キャリアアドバイザーや営業が伴走し、本人自身が今後のキャリア形成についても考えられるようサポートしていきます。また、「無期雇用者」として安定的に働くことができる環境を整備することにより、活動の場も広がり、派遣先で責任のある仕事を任されたいという前向きな気持ちで頑張ってくれている方も多いと感じています。また細やかなサポートを大切にしているからこそ、派遣スタッフとキャリアアドバイザー・営業の間で、より良い関係性が構築されているのだと思います。

田形:

選考の頻度や人が直接関わるという部分が手厚いという印象を受けますが、「売り手市場」の状況下で選考が厳しい分、希望者が減ってしまうという懸念も感じますが、実際のところこちらのサービスは伸びていらっしゃるのでしょうか?

 河原:

はい。おかげさまで「マイナビキャリレーション」は、当社の全派遣スタッフ稼働人数のうち1/4程度を占めるまでに成長しています。他社でも同様の無期雇用派遣サービスがあると思いますが、当社では採用プロセスにおいて内部、外部の「人」の介在を通して、しっかりと求職者の人となりを理解することを重視しており、その点で差別化されています。派遣先に「マイナビキャリレーション」の研修内容を伝えると驚かれることも多いですが、その分派遣先には当社がしっかりと選考しているという安心感を提供できますし、応募いただいた求職者の方からも「自身が理解されたうえで採用されたと感じられるため安心する。」とのお声をいただいております。

田形 正広(たがた まさひろ)
Life Ship株式会社 代表取締役

最も重要なことは人による”対面”での対応にあると考えています

田形:

なるほど。日雇バイトの自動マッチングのような世界観とは違い、長期的な視点でキャリア形成を支援するという無期派遣サービスに関しては、人による対面の対応が手厚かったり、選考が丁寧で厳しかったりする方が、派遣先にも派遣スタッフにもその責任感やサービスの品質が伝わって御社に託してみようとなるのでしょうね。

河原:

はい、そうですね。テクノロジーを活用して業務の効率化を図ることはもちろん必要ですが、最も重要なことは人による”対面”での対応にあると考えています。派遣スタッフと派遣先の間にうまく介在することは、派遣会社の真髄だと思っています。例えば、効率を重視するあまり書面上の経歴しか知らない派遣スタッフに対して、お仕事の紹介をするのも、派遣先へその派遣スタッフをご紹介するのも、派遣会社として十分に介在価値を発揮できていないのではないかと考えます。そういった部分については「人」が介在して、派遣スタッフの魅力を理解して派遣先へ伝える、ということをしないと、我々の存在価値や意義が薄らぐのではないかと思います。

田形:

マイナビキャリレーションの「キャリアをつなげる」という意味が素敵だなと思いましたが、無期派遣労働者のキャリアの先には正社員としてのキャリアもあるのでしょうか?

河原:

仰るとおりです。入り口は、事務職の経験を積みキャリアップしたい、キャリアチェンジをしたい、といった部分ですが、経験を積んだ後に、正社員として働きたいという希望が出てきた際には、積極的に派遣先やその他の企業での正社員登用への支援を行っています。「マイナビキャリレーション」ではキャリアアドバイザーが中心となって就業中のサポートを行っております。選考段階から何度も顔を合わせているので、一人一人を理解したうえでキャリアコンサルティングをしております。一人一人にあったキャリアをつないでいけるように、最大限支援したいと考えています。

田形:

御社はマイナビグループという点でも「正社員としての転職」という部分で求職者にとっても心強いでしょうね。細やかな対面でのサポートを重視していらっしゃる御社ですが、マイナビキャリレーション以外の派遣スタッフの方のサポートはどのように行っているのでしょうか。

河原:

「マイナビスタッフ」というサービスブランドで展開している通常の派遣スタッフについては、営業担当がメインでサポートを施しています。有期雇用、無期雇用に関わらず、派遣スタッフのキャリア支援や就業サポートをより一層充実させるため、一部の地域で試験的にサポート体制を変える等と、試行錯誤している段階です。派遣スタッフの働き方や価値観によって「どのようにサポートされたいか」というニーズにも多様性があると思いますし、業界の事業環境や当社の経営方針も踏まえてどのような体制がベストかを模索中です。

派遣先と派遣スタッフの間でバランスをとりながら、どちらにも嘘はつかず、真摯に向き合い続けたいと思っています

田形:

御社は優良派遣事業者認定を取得されました。認定制度にはスタッフのサポートやキャリア形成に関する基準があり、派遣先に対する対応項目の倍の数を派遣スタッフに対する項目が占めています。優良派遣事業者認定制度は、中身がしっかりしており、個人的にはまさに「派遣2.0」時代にマッチした制度だと感じております。一方で、中身がしっかりしている分、社内体制の整備など、簡単に取れる認定ではないとも思うのですが、これを取得した経緯や動機についてお聞かせ下さい。

河原:

手前味噌かもしれませんが、当社は真面目にしっかり派遣事業に取り組んでいるという自負があります。その中で自社の社内体制や業務フローをより高い基準で整備し、外部の客観的な評価を受けることで、今まで以上にお客様や派遣スタッフの方からの信頼を高めることにつながると考えました。また当社はマイナビのひとつの事業部から、2016年に分社化しました。マイナビグループとして新卒、転職、アルバイトの領域に関しては業界内でもトップクラスのレベルまで成長をしていますが、派遣事業においては規模的にも業界内ではまだまだ中堅の立ち位置です。同じマイナビグループとして、派遣事業に関しても、世の中にもっと認知されたい、信用されたいとの思いもあり、取得を決めました。

田形:

最後になりますが、河原社長にとって「派遣スタッフ」とはどういう存在でしょうか。

河原:

昔からの考えですが、派遣スタッフは大切な「パートナー」だと考えています。当たり前ですが、派遣事業は派遣スタッフがいないと成り立ちません。私は「やじろべえ」のたとえをよく使うのですが、派遣先と派遣スタッフの間でバランスをとりながら、どちらにも嘘はつかず、真摯に向き合い続けたいと思っています。また、派遣スタッフにより良いサービスを提供するには自社の社員の心身のコンディションも大切だと考えており、お互いが対等に向き合うという意味でも「パートナー」という認識がしっくりくると思います。

田形:

本日お伺いして、河原社長の謙虚で誠実なお人柄が会社全体にも現れていると感じました。丁寧でかつスピード感のある御社にはぜひ「派遣2.0時代」の旗手のような存在になって頂きたいです。心から応援しております。